====== MUSER ライブハウス インタビュー ======
スポットライトのあたるステージの裏側の世界。 ライブハウスを運営しているスタッフの方へのインタビューを通して、 この世界に飛び込んだきっかけや、考えていることなどを紹介していきます。 お店の顔が見えてくると、そこで繰り広げられる音楽の世界がより面白くなるような気がしませんか? 第9回は、元住吉Powers2のブッキングマン加藤直樹さんにインタビュー!
■ 本日はよろしくお願いします。まずはそもそものライブハウス業界に入ったご自身の経緯を伺わせてください。
僕職歴がすごく多くて、高校生の時から色んなアルバイトをやってきました。10代の頃からずっと音楽が好きで、初めて野外フェスへ行ったのは92年のJapan Splashでした。Maxi Priestが初来日した年で、20歳くらいの時でしたかね。大学へ行く前から居酒屋とかバーが好きで、10代の頃から結構飲み歩いていました(笑)。それでバーテンになりたいと思って大学を一年で辞めたんです。バーテンをやりながら、途中職を失った時はキャバクラのボーイやホストクラブとか、20代は10個くらい職を転々としてしましたね。 30代からアルバイトでトラックドライバーをやり始めたんですよ。ドライバーをやりながら野外レイヴとかも遊びに行ったりしていて、いわゆるトランスとかが流行っていた時代ですね。25 年くらい前かな。でもレイヴシーンに若い子が増えてきて客層がとっ散らかってきちゃって、パーティーの雰囲気があまり良くなくなってしまったんです。
そんな時、2000 年に Phish が来日したんですよね。 日本でジャムバンドブー ムが起こり始めてきて、親父狩りを恐れてというわけではないんですけど(笑)自分の遊び場は自分で作ろうと思い、濱Jam祭というイベントを横浜の Thumbs up でやりはじめました。それが 2003 年ですね。
ドライバーの仕事があったのでお金稼ぎの目的ではなく、単純に自分で遊び場を作って皆に楽しんでもらうというスタンスでやっていました。上がりは全部アーティストに還元して飲み代は自腹切って、というようなことをずっとやっていましたね。その後大きなところでやりたいと思い、2007年に初めて横浜ベイホールでオールナイト開催して1000人くらいのお客さんに来ていただきました。夜のクラブシーンがまだ元気な頃で、ダンス規制法などが出る前だったので夜の街にまだ活気があったんです。2007、8、9、10年とベイホールでやったんですけど、だんだん規制が厳しくなったりとか景気が悪くなったりで、クラブシーンの元気がなくなってきてしまいました。そして2009年にリーマンショックがあったじゃないですか。リーマンショックの煽りを受けてドライバーの仕事がなくなってしまったんですよ。

それでどうしたもんかなと思っていた時に、ちょうどここがオープンして2年目くらいだったんです。 POWERS2は今年で15年なんですけど、その頃はちょうど2年目で伸び悩んでいた時期でもあり、箱の人間がブッキングをしていたんですけどうまいこと回らなくて、その時に僕が仕事辞めたから働かせてくれと言って。元々ここでもイベントをやったことはあって昔から知っていた人達だったので、すぐにここで働き始めたました。それが2009年かな。 スタッフとして働いたのは最初の3年だけで、それからはお店とは離れてフリーランスという形で今でも続いてます。
なのでここのブッキングがメインではあるんだけど、地方の野外フェスのブッキングや制作もやってます。フジロックの小さいステージのブッキングとかも手伝ったり。フリーランスだけど多い時は月に20本くらいブッキングしているので、メインは基本ここではあるんですけど、頼まれれば地方も行ったりしています。
■ブッキングは加藤さんからアーティストに声がけをしていく形ですか?
半分半分くらいかな。半分はバンド側からこんなことやりたいんですけど、とか良い対バンありませんかね、とかそういうノリで来ることもあるし。半分くらいは僕がこの組み合わせだったら面白くなりそうだなっていうのを提案したりとか。ジャンルはこの10年間で多岐に渡ってきました。アーティストが紹介してくれることも多いので、おかげさまでいろんなジャンルをやるようになってきました。

■コロナ禍での取り組みはどうですか?
一昨年の4、5月はどこも止まってましたが、6月から規制が徐々に緩和されて、それからずっとやってますね、ここは。時短営業をした時もありましたけど、基本的にはずっと開けてやってました。ただなかなか集客は厳しいですね。厳しいは厳しいですけど、やらないよりはやった方が良いと思って。ムードがどんどん落ち込んでいくのが嫌だったので。 僕自身も4、5月止まっていた時には精神的にも落ち込んじゃって。音楽のない生活っていうのはあり得ないので、表現の場は何としてでも守り続けないと、と思いました。自分自身のためでもあるし、ミュージシャンやお客さんのためでもあるんですけど。 協力金に頼っても結局一、二人でやってるようなお店だったらいいですけど、そういうわけにもいかないので。配信もちょいちょいやりました。
でも4、5、6月ぐらいまでは配信で潤った人たちもいると思うんですけど、現場が稼働し始めてくるとどうしても配信はなかなか難しくて。いろんな不具合が出てきたりとか、そういうことを考えると配信はどうなのかなっていう。 月見ルみたいに完全に振り切って配信で行くぞって言うお店も出てきて、それはそれでいいと思うんですけど、ここは現場主義で行こうかなという。
僕自身もあまり配信に興味がないと言うか、やっぱり音楽って現場に行って体で聴くものだと思ってます。やっぱりライブミュージックが好きなので、現場に行ってなんぼかなって。 配信も選択肢の一つとしてはオッケーだと思ってるんですけど、僕自身のスタンスは現場でっていう。最近はほとんど配信はやってないですね。アーティスト側が乗り込みでっていうのはたまにありますけど。この箱はチケット代どうこうというよりは飲み食いしてもらって成立しているので、お客さんを呼ばないと持たないんですよ。 あとこのコロナ禍で思うのが、ボブマーリーやジョンレノンや清志郎が生きてたら「ワクチン打とうぜ!」て言ったかな?とかよく考えますね。ロックコンサートでワクチンパスポートとかどこがロックなの?て思います。
■おすすめのメニュー
ハンバーガーとラムステーキ丼、ビーフステーキ丼が人気ありますね。美味しいです!


■おすすめのアーティスト
おすすめのアーティストは、ここで一番頻繁にやってくれている元SUPER BUTTER DOGの竹内朋康というギタリストがいるんですけど、彼はコロナ渦ですごく頑張っていて、いろんなプロジェクトをやったりしていて。彼が関わっているバンドでMomiji & The Bluestonesという、女の子がボーカルのブルースバンドがあって、これが結構面白いですね。

あとIWAZARUっていうHOME GROWNのリズム隊、サックスの元晴、鍵盤奏者でくるりのサポートなどもやっているハタヤテツヤのバンドなんですけど、これも良い感じですね。

あとPlanet Greenという、これも竹内がリーダーをやっているバンドで、Grant Greenというジャズファンクやレアグルーヴで有名なギタリストのカバーをやっているバンドです。これもすごく面白いですね。

あと日本を代表するダンスホール・レゲエバンド、HOME GROWNも最近定期的にやってくれています。なかなかHOME-Gをこんな小箱で見れることはないと思うので、とてもおすすめです。

5/6にもHOME GROWN presents REGGAE JAMMIN’2022をここでやりますよ。
(SNSについて) SNSの普及は良い面も悪い面もあると思うんですけど、アーティストの裏の顔とか素顔をSNSで見れるようになって、アーティスト同士のやりとりとか、この人こういうのに興味があるんだなとか、そういった情報収集にはものすごく役に立っていて。ブッキングする側からするとイメージを形にしやすいし、そういう事考えてるんだったらこういうのどう?みたいな感じで、SNSはブッキングにすごく便利だなと思います。一番はアーティストのモチベーションが上がるような企画を作りたいですね。彼らが面白いと思わないとお客さんも楽しめないだろうし。