2021.02.03
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【音楽ライブ配信MUSER】元・Geffen Recordsの経営者Neil Jacobson、音楽著作権とテックスタートアップ買収を目的に2億ドル相当の米IPOを計画

MUSERが注目する世界の音楽ニュース

ライブを見ながら、アーティストを応援するための配信プラットフォーム「MUSER」が注目する世界の音楽ニュース。
今回は、アメリカで元・Geffen RecordsのNeil Jacobsonによって新しく立ちあげられたThe Music Acquisition Corporationについての記事を音楽業界ニュースサイトMusic Business Worldwide(以下、NBW)より翻訳して紹介したい。




2018年の夏、ロンドン証券取引所でMerck MercuriadisがHipgnosis Songs Fundを上場させたことは音楽業界を大きく変化させた。

MercuriadisはこのIPOの株式発行によってロンドン証券取引所での取引前に2億ポンド(約300億円相当)の利益を上げた。このお金でMercuriadisとHipgnosisは現代で最も頻繁に買収をする企業になった。

Hipgnosisの猛烈な成長は金融界で批判されることもあったが、初期投資者は大喜びしている。2018年6月の上場から2021年1月の間に企業の株価は16%以上増加し、コロナの影を全く感じさせない成長を果たしている。

NBWは音楽業界で活躍する人物が新しい権利会社の上場を企てていることを明らかにしたい。それはアメリカで起きていて、Hipgonisisの成功の後を追っている。

Neil Jacobsonはロサンゼルスを拠点とするGeffen Recordsで長期間経営者を務めており、2019年にUMGレーベルを退社し、自分のソングライター/プロデューサーマネジメント企業を設立した。

その企業は現在Hallwood Mediaの名で知られており、ここ2年間の重要な権利取得取引に大きく関わっている。その取引の中の1つにHallwood Mediaのクライアントで、カニエ・ウエストを代表とするアーティストのプロデューサーであるJeff Bhaskerがミュージックカタログとプロデューサーポイントを売却した話がある。

(Bhaskerのプロデューサー税と彼の発行カタログは2019年にHipgnosisに回収された。Rolling Stones紙にJacobsonはMorgan StanleyにBhaskerの権利を推定6000万ドル(約62億円相当)で売却する取引を締結したと語っている。)

MBWはJacobsonの新しい会社であるThe Music Acquisition CorporationのSPAC (Special Purpose Acquisition Company:特別買収目的会社) S-1目論見書を手に入れた。文書には会社がニューヨーク証券取引所で差し迫っているIPOで2億ドルの売り上げを得ようと計画している(需要によっては2.3億ドルまで登る可能性もある)。

アメリカでは、SPAC (Special Purpose Acquisition Company) は収益を利用して上場後に認可されていないビジネス/資産を買収するために利用されるIPOで資本を増加させる組織のことを指す。

言い換えれば、もしJacobsonがこの取引に成功すれば9桁に登る利益を得て、その利益を利用して音楽業界で買収祭りを行うことができる。

見込みのあるIPOのbook-runners (幹事会社) にはCitigroupと Cantor Fitzgeraldの名前が挙げられている。

The Music Acquisition Corporationはこの利益を何に使うのだろうか?
音楽著作権の買収を行う可能性が高いが、ただHipgnosisの真似をしているだけではない。

目論見書では企業の4つの買収ターゲットを明確にしており、これら全てのターゲットは ”Tech(テック)”と音楽の間を交錯している。

目論見書ではこの4つのエリアを以下のように分けている。

オーディオコンテンツ:

「私たちはコンテンツ発見やマネタイゼーションの新しい機会を作ることで、コンテンツクリエイター、IPオーナーや消費者を支えているターゲット企業を探ろうと考えている。レコードレーベルや音楽出版社、ストリーミングサービス 、ポッドキャストプラットフォーム、音声プラットフォームや代理店とその他の新進プラットフォームを含んだオーディオ業界に広がる私たちの広く深い人脈が、この業界においてターゲットになる見込みがある企業にとってユニークな供給源と機会を選別する存在になることができると考えている。」

テクノロジー:

「音楽業界の飛躍的な進歩は先駆的なテクノロジー企業によるところが大きい。音楽制作のための税フリーのサンプルライブラリー、音楽カタログの解析と組織化、データサイエンスとトレンド調査企業、ブロックチェーンと他のAI運用プラットフォーム等様々な角度からのアプローチがなされている。」

ソーシャル:

「TikTokやTrillerのようなプラットフォームは音楽に新しい命を吹き込んだと同時に、それらのプラットフォームの生き残りも音楽業界に左右される。私たちはソーシャルメディアネットワーキングアプリ、ソーシャルコンテントプラットフォーム、オンラインビデオシェアリングプラットフォームに限らず様々な企業にユニークな価値を付与することができる。」

消費者

「音楽を主要事業として導入し、順応させてきたブランドは、近年消費者経験とパートナーシップで大きな成功を手に入れている。例としてBeats by Dre and Pelotonが挙げられる。私たちはトップレベルの音楽とアーティストの所有権へアクセス、業界内の資源やコネクションの提供、音楽著作権に関わる業務を行うことでどの消費者向けの企業にも即座に価値をすることができると考えている。」

The Music AcquisitionのCEO兼会長としてJacobson、そしてSPACのリーダーとして元Lehman Brothers(リーマン・ブラザーズ)とBarclays Capital(バークレイズ)のベテランTodd LowenがCOOを務める。

JacobsonとLowenに加えて、The Music Acquisition Corporationの取締役としてMichael Levitt、Ben SilvermanとTunde Balogunの名前が挙がっている。

Levittは2016年7月からKanye Anderson Capital AdvisorsのCEOを務めている。Silvermanは起業家でありながら映画・テレビプロデューサーで2016年からPropagate Contentで会長兼共同経営者も務めている。

Balogunは音楽業界での認知度が高く、アメリカを拠点にレコードレーベル、音楽出版、アーティストマネジメントとして活動するLVRNの共同設立者兼会長であり、契約アーティストには6lack、Summer Walker、Dramなどがいる。

The Music Acquisition Corporationの目論見書にはこう記載されている:

「音楽業界は無数のコンテンツオーナーとクリエイター、出版、流通プラットフォームやその他、他業界の参加者や消費者にテクノロジーとサービスの利用を提供しているビジネスによって構成されていて、その多くは個人経営によるものです。私たちはマネジメントチームの経験と能力がターゲットとなり得るビジネスにとって私たちを魅力的なパートナーにし、ビジネスコンビネーションを成功させる能力を高め、ターゲットであるポストビジネスコンビネーションに価値を付与することができると考えている。」

「私たちのマネジメントチームの音楽業界でビジネスを獲得、運営、そして成長させていた経験と業界を引っ張る重役や起業家、投資家、交渉人とのネットワークが魅力的なビジネスコンビネーションの機会を提供し、ビジネスコンビネーションの第一歩達成させることに役立つと考えている。」

目論見書には会社がティッカーのTMAC.UからNYSE に上場する予定であることが記載されている。

さらに目論見書には「私たちのユニットがNYSEに記載されている、またはこの目論見書発行直後に記載されることを期待する。」と書かれている。

目論見書は1月15日付けになっている。

参照リンク:https://www.musicbusinessworldwide.com/ex-geffen-head-neil-jacobson-plots-200m-us-ipo-to-buy-music-rights-tech-companies/