2020.11.28
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【音楽ライブ配信MUSER】中国で独立系アーティスト市場が拡大~中国国内大手音楽プラットフォームの争いが始まる

MUSERが注目する世界の音楽ニュース

ライブを見ながら、アーティストを応援するための配信プラットフォーム「MUSER」が注目する世界の音楽ニュース。今回は、世界の音楽ニュース発信サイトMusic Business Worldwideより、あまり注目されない中国国内の独立系アーティスト関連のニュースを翻訳してお届けします!

果たして、世界2番目のGDP大国の独立アーティスト市場はどうなっているのでしょう、、、?


最近、独立系アーティストに関連するニュースが増えていることをMusicn Businees Worldwide (以下、MBW)の読者ならお気づきだろう。TuneCoreが今年、$4億を100万人超の独立系アーティストにロイヤリティとして支払ったことや、TuneCoreのライバルCD Babyのアクティブユーザーが95万人を超えるなど独立系アーティスト関連のニュースが絶えない。Midia Researchによると、世界全体で独立系アーティストは$8.7億を生み出しており、これは世界全体における音楽業界全体の4.1%にのぼる。

このような中で、中国でも独立系アーティストが注目されつつあり、中国国内の2大ストリーミングサービスを運営する、Tencent Music Entertainment(TME)とNetEase Cloud Musicは既にその市場を獲得するために動き出している。

TMEは、既に$8000万をTencent Music プログラムを利用する独立系アーティストに払ってきたと発表した。 3年前にリリースされたこのプログラムは独立アーティストに対して音楽出版、マーケティング、著作権管理、技術トレーニングなどのサービスを提供している。TMEのCEOであるCussion Pangは、独立系アーティスト市場の可能性について以下のようなコメントを残している。

“私たちのプログラムを利用する独立系アーティストの数は去年から20倍になった。これは、我々が彼らに提供する経済的インセンティブとサポートサービスが要因となっている。これからも引き続きそのようなサポートを提供していきたいと思っている。そうすることで、サービスの利用者とアップロードされる楽曲の数が年々倍増するだろう。”

今年に入りTMEは、中国政府の独占禁止法によって保有するアーティストの著作権を独占できなくてなってしまった。この影響で、TMEはレーベル事業から独立系アーティスト向けのサービスに方向性を転換しているのかもしれない。

TMEの最大のライバルであるNetEase Cloud Musicについても独立系アーティスト市場を開拓するための様々な施策が行われており、TMEが独立系アーティストに提供しているようなサービスをリリースするとも噂されている。NetEaseは独立系アーティストを支援するプロジェクトをProject Cloud Ladder と名付け、「独立系アーティストがより良い音楽を作れることを後押しする」ということを目標に掲げている。これは何を意味しているのだろうか?それは、NetEaseが提供しようとしているサービスが典型的な独立系アーティスト向けのディストリビューションサービスを超えるものになりうるということだ。

NetEaseは11月19日に第3四半期の業績を発表し、CEOのDing氏は独立系アーティストをサポートすることの重要性を発表で明言した。

“NetEaseはこれからも独立系アーティストへのサポートを強めることで、プラットフォームの独自コンテンツを増やしていきたいと思う。具体的なサポートとしては独立系アーティストと作曲家やプロデューサーと繋げることや、AIを使用したマーケティングなどを考えている。”

NetEaseの発表によればNetEase Cloud Musicは20万人を超える独立系アーティストの活動拠点となっており、昨年と比べて2倍の伸び率を記録しているという。さらに、2016年の発表ではわずか2万人だったので4年間で10倍になっている。

“オンラインプラットフォームは中国音楽業界の典型的な音楽の発信方法を変えつつあり、独立系アーティストや若いアーティストに努力し、輝くチャンスを与えてる。” – NetEaseの業績発表レポート

このレポートでは11857人の独立系アーティストにアンケートが実施されており、そのアンケートでは40%以上の独立系アーティストが「顕著な収入の増加」を体験したという。NetEaseは今年、Project Cloud Ladderでの収益$1500万を計上した。

これらの発表を見ると、中国の独立系アーティスト市場をめぐる戦いがTMEとNetEaseの間で始まっていることがわかる。Ding氏は会見でこの2社による戦いについてコメントを求められ、以下のようにコメントしている。

“我々は、NetEaseが独立系アーティスト市場を牽引するサービスになることに自信を持っており、その目標に対して野心的な努力を行っていく。そのために、私たちはオリジナルコンテンツということを大切にしながら、中国の独立系アーティストがより良いコンテンツが作れるような環境を整備し、できる限りのサポートを行なっていきたい。”

MBWが受け取ったNetEaseの資料によると、彼らは今後の最重要目標として “中国国内の数万、数十万人の独立系アーティストをサポートすることで中国国内の数億人以上いるリスナーに対して質が高く、斬新な音楽を提供すること”をあげている。

“我々が目指す「独立系アーティストが尊敬される環境」は、我々に競争優位性を与えてくれる。そして、独立系アーティストの成長は、我々にとってターゲット市場の拡大になり、ユーザーにとっては持続的なコンテンツの提供に貢献することになる。”

TMWは月643万人のアクティブユーザーを有しており、NetEaseは800万人の登録者がいるという。中国の独立系アーティストは、2社のどちらに振り向くのだろうか、これからも目が離せない。

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