2020.12.11
Interview

WGT企画制作プロデューサー 稲垣勉さんとMUSERの話

MUSERが定期配信しているライブイベント『MUSER X WGT presents LIVE GARAGE NEXT』。このイベントをプロデュースしているのがWeekend Garage Tokyo(以下WGT)の稲垣勉さんだ。稲垣さんはWGTの音楽プロデューサー以外に『Noa Noa』というブラジリアン・ミュージックを核としたバンドでBENとしても活動されている。 残念ながらWGTが今年の12月で閉店することが決まり、『LIVE GARAGE NEXT』も12月で終了することになった。そこで、MUSER代表の次呂久が、稲垣さんにご自身のキャリアについて、MUSERとの取り組みについて、そして閉店に対する想いについて伺った。

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最初に、稲垣さんご自身について教えてください。 まずは、現在の「カフェ・音楽プロデューサー」という、ちょっと変わったキャリアにいたった流れを聞かせてください。

そうですね、元々音楽とカフェが好きだったのが今に繋がっていると思います。学生の時からカフェでアルバイトをしていましたが、音楽プロデューサー/DJの橋本徹さんがオーナーの『アプレミディ(渋谷)』というカフェで働いたことが、カフェと音楽の繋がりを強く意識した転機でした。そこには10年くらいお世話になりましたが、イベントをやったり、バイヤーをやったり、店長を務めたりなど、色々なことを経験させてもらいました。


続いて、ミュージシャンとしての稲垣さん。主に『Noa Noa』での歩みについて、教えてください。

自分で音楽をやるようになったのは高校生の時でした。ジャズが好きだったので、本当はジャズをやりたかったんですけど、ジャズは難しい上に楽器が高くて。そういう中で、ジャズよりも少し敷居が低くて、部室にあった値段も安いギターで始められるブラジル音楽をスタートしました(笑)。 その後、Noa Noaを結成。ちょうどクラブジャズの流れもあり、ブラジル音楽も注目されつつあったので、何社かにデモテープを送っていたら返信が来たんです。2000年代当時は、クラブにいけばブラジリアンハウスなんかがかかっていたりして、タイミングがよかったんだと思います。 それで、2001年にインディーズデビュー、2003年に日本コロムビアからメジャーデビューさせてもらって、ラジオ出演したり、大型フェスにも呼んでもらったりして、忙しくさせてもらいました。 けれど、活動をしていく中で、メンバーの脱退であったり、自分の音楽の方向性みたいなもので一回お休みをして、紆余曲折ありましたが、2018年に久しぶりに復活して今に至ります。



Noa Noaで一番思い出に残っているライブはなんですか?

大きい舞台でのライブよりも、毎年湘南の海の家でやっていたライブが一番記憶に残っています。僕自身はインドアで、海がまったく似合わないんですが、自分の音楽は海にすごく似合っていて、そこでのライブは大好きでした。音楽は、聞く場所、空間や状況によって表情がガラっと変わる。そんな体験ができたのもそこでのライブが好きだった理由ですね。


W’s(WGTの親会社)には、どういう流れで入社されたんですか?

結婚して子供ができて、いつまでも音楽では食っていけないだろうな、と思い始めていた時に、僕の中での大きな事件、東日本大震災が起きて、音楽の仕事がごそっと無くなったんです。 ちょうどリリースした新アルバムも何のプロモーションもできずに、出しただけで終わっちゃいました。その中で、ちゃんとした会社で、何かカフェと音楽に関わる仕事をしたいと思い、「カフェを通して街を作る」というコンセプトを持ったW’sに共感し、これまでの自分の経験が活かせるのではないかと考え、入社しました。

当時から、カフェを通して音楽で人が繋がる『場』を作りたい。ライブハウスやクラブとも違う新しい音楽のサードプレイスが必要だと思っていました。 カフェやラウンジ、海の家やテラスなどの野外で鳴る音楽の雰囲気がとても好きだったし、空間も海外のレコードジャケットや映画に出てくるようなあの光景にしたい。そんな「場所」を作りたいと。


最初の店舗はWGTじゃなかったんですよね?

そうです。最初は『ARK HiLLS CAFE(以下ARK)』に配属されて、店長をやっていました。 これまで経験したカフェよりも規模が大きく、最初はとにかく大変でした。

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ARKでのライブも稲垣さんが立ち上げたんですか?

いや、僕が行く前からライブは月1ぐらいでやっていました。ただ、運営を外部委託で回していたこともあり、ミュージシャンもどうしても仕事的で、BGMやってお金もらって終わりみたいな印象を受けました。それで、これだとすぐなくなるなと思い、もっと違う音楽の場が必要だと考えました。そこから、外部委託をやめて、自分で企画・運営することにして、知り合いのミュージシャンに「一緒にライブを作ろう!」と声をかけ始めました。やっぱり自分から動かないと、待ってるだけじゃ形にならないですからね。

そうやって、8ヶ月くらいがむしゃらにやっていたら、少しずついい形のライブができるようになってきて、ある日会社の方から「新しいお店出すから企画会議に顔出して」と言われたんです。 そこで「新しいお店(WGT)」はライフスタイル、カルチャーを発信する場所にしたいからそれを僕に音楽でやって欲しいって言われて、プレッシャーも大きかったですけど自由に任せてもらえて、本当にありがたかったと思っています。オープンは2013年の7月でしたが、とにかく毎週しっかりライブを作れるように、知り合いはもちろん、いろんなイベントに顔を出して、飛び込み営業みたいな感じでアーティストを集めてましたね。


WGTでの一番の思い出ライブはなんですか?

そうですね〜。マスバシ(MASSAN X BASHIRY)さんですかね。マスバシさんとはARKの時からの知り合いで、WGTができるっていう話をしたら、初めてのワンマン企画をWGTでやりたいと言われて。オープン間もなかったので、機材も全然揃ってなくて大変でしたね。彼らは毎回新しいことに挑戦してくるので、とても刺激的なんです。その時のライブも、WGTというこれまでになかった音楽空間ならではのライブになって、ライブハウスとは違う一体感が本当に心地良かったです。 たくさんライブをやっていると、どこかフォーマット化してくると思うんですが、僕は毎回イレギュラーなものを受け入れたいと思っています。イレギュラーなものが次の新たなスタンダードに繋がるものを生み出していくはず。何か新しい提案やリクエストをされたら、必ず形にするっていうのが信条なんです。ここなら形にしてくれるんじゃないかと思って頼ってくれているはずなので、できるだけそれに答えたいんですよね。


MUSERもサービスがまったく形になっていなかった、2018年夏頃からお世話になっていますが、最初はWGTでのライブではなく、ある実験的なライブにNoa Noa としてご出演頂きました。 その当時、サービスの理解はできていましたか?

いや、まったく(笑)。正直、「まぁ、ライブに呼ばれた」みたいな感覚でいました。 ただ、世の中の色々な決済が電子化していく中でライブの投げ銭もそうなっていくのは、時代の流れ的には理解できるかなと思いました。ただ、それ以外の細かい仕組みはまったく(笑)。


その投げ銭の仕組みも最終的には「ファン特典付き投げ銭」という形で進化して、MUSERオリジナルの機能として、特許も取れたんですよ!

それは、良かった!

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2019年は、ほぼ毎月WGTで『MUSER SHOWCASE LIVE』をレギュラー開催させて頂くことになりましたが、その時も随分、無茶な相談をしましたね(笑)

そうですね。いつも最初の説明でサービスの資料を見せてもらうんですけど、毎回変わってるんですよね。その時も前回と随分変わっていて、ん?今度は何が変わったのかな?みたいな(笑)。 でも詳しくは分からないけど、面白そうだなと思ったんですよ。明らかに、企業的なただの営業みたいな感じだったら温度感で分かりますけど、そういう感じではなかったですよね。 あとは、わからなかった時は、やらないじゃなくてやるタイプなんで(笑)。まぁ、ここはそういう場所ですからね。


そして、今年は配信ライブシリーズの『LIVE GARAGE NEXT』を一緒に立ち上げました。 配信ライブ自体は2019年5月からWGTのイベント内で実験を始めさせてもらい、11月に正式スタート。今年になると、新型コロナが発生し、そこから『LIVE GARAGE NEXT』の打ち合わせが始まって、5月に本格始動。とにかく怒涛でした。ここまで走ってきて、どうですか?

正直、疲れましたね(笑)。2020年は試練の年だったと思います。そもそも、お店で配信をやってみようと思ったのは、あるイベントがキャンセルになりそうになった時に、配信したのを経験して、こうやってハコ貸しみたいな感じでWGTで配信をやっていくのもありかもしれないと思ったんです。そこで、「そういえばMUSER配信やってたな」って思って、次呂久さんに連絡しました。最初に資料を見た時に収益的にこれはすごいかも!って思って。それからアーティスト集めをしました。自粛中だったのであまり反応はなかったんですけど、自粛要請が5月に弱まってからもう一回声をかけた時に一斉に返信が来て(笑)。それで7月と8月は文字どおり、忙殺されましたね。


MUSERって良くも悪くもいろんなことが可視化されると思うんです。コメントだったり、お客さんからの応援具合(投げ銭)だったり。正直、そこがあまり動かなかったらどうしよう、って尻込みしちゃうアーティストさんもいると思うんですが、稲垣さんはどう説明してアーティストの方にステージに立ってもらっていたんですか?

そうですね、MUSERについて一度に全てを説明するのは難しいので、心がけていたのはポイントだけ押えてもらうことですね。そのポイントは2つで、1つ目はこちらが全部準備するので、普通にライブする感覚で来てくださいってこと。2つ目はMUSERの配信はマネタイズしやすいってことですね。「お手軽さとお金」です。そこから、徐々に投げ銭の仕組みや、オペレーション、配信チームのことなんかを伝えるようにしていました。もちろん、人によって理解度が違うので相手によって伝え方を変えることは重要だし、そのさじ加減は意識しました。

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配信サポートチームという言葉が出たので、そこについて。ウチは他と違って自社で配信チームを持って、主催者と一緒にライブを作ることにこだわっていますが、一緒にやってみて何か感じることはありましたか?

最初に現場で見たときは、スタッフ数や機材など、結構こじんまりしているなと思いました。でも、出来上がったものを見ると、しっかりお客さんが満足できるクオリティになっている。 コスト的にウチでは大手みたいなことはできないことを考えると、手に届く範囲をやるっていうことはすごく大事だと思っています。そして、WGTでやり続けることを考えた時に、こういう形だったらコストをまかないながら継続できるかなって思いました。あと、糸賀さん(MUSER配信サポートチームのディレクター)やスタッフの方々が、うちの要望に対して色々と前向きなんですよね。例えばアーティストが、結構な高さからの真上アングルの画が欲しいとなった時に、外部の撮影チームだったら「それはできません」とか「別料金です」とかなると思うんですが、MUSERのチームは、そういうところにもちゃんと向き合ってくれるのが良いなと思ってます。


それを糸賀が聞いたら喜びます!

そういう姿勢はすごく大事だと思います。如何せん、こういう世界は面倒くさいことが多くて、姿勢とかマインドが大切なので。MUSERの配信サポートチームの方は今の仕事に対するマインドがすごく良いと思います。


最後に、先日MUSERの新機能「チャンネル機能」について紹介させていただきましたが、どうお感じになられましたか?

「配信ライブ」というものの、アーティストに対しての伝え方をこれからは変えていかないといけないと思いました。多くのアーティストさんが、コロナ禍の中で配信ライブを一通り経験したと思うんです。それを踏まえて、これからは、「“その“配信ライブ」ではなく、「配信番組」を作りませんか、と違う価値観の提示が必要だなと思いました。それは簡単なことではないですが、その先にある可能性をしっかり伝えられれば広がっていく気がします。 自分がライブをやりながらチャンネルを持つことができるってなったら興味を持つ人が結構いるんじゃないかなと思いますよ。


そうですね、そうすれば配信ライブは利益が出ないみたいな先入観も消えていくと思いますしね。 最後に、WGTとLIVE GARAGE NEXTが12月末で終了になりますが、今の率直な想いを聞かせてください。

やりきったかどうかでいうと、やりきってないけど、感情的な部分はだいぶ一巡しちゃってて、この先をどうするかっていうモードではあります。WGT的には最後なので音を鳴らして終わらせたいですね。とりあえず12月は今まで出演してくださった皆さんに遊びに来てもらって、これまでの感謝を伝えたり、未来の話なんかをしながら WGTを終われたらなと。お店は閉まるけど意思は引き継がれるし、また別のところで同じようなことができるかもしれないですしね。ビジョンについてはそれぐらいのつもりでありたいなと思いますね。


長時間のインタビュー、ありがとうございました!

今回は、稲垣さんに貴重なお時間を割いてもらい、ご自身のバックグランド、WGTでのお仕事、NOANOAでの活動など様々な貴重なお話をして頂きました。WGTは、12月で閉店しますが今後の稲垣さんのご活躍に期待です!

12月もMUSERはWGTでのライブを配信します。WGTでのライブが楽しめる最後の1ヶ月、是非ご参加ください!12月の公演は以下の通りです。

12月15日(火) HIRAKU YAMAMOTOさん X JULIA SHORTREEDさん

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12月20日(日) Jeityさん

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12月22日(火) Jun Futamataさん

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12月27日(日) 宮 武弘さん

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また稲垣さんがご活躍する「NOA NOA」は現在4ヶ月連続配信を行っています。まずは1ヶ月目の11月25日にリリースした、「Blackbird」をチェック!!


<プロフィール> 稲垣勉 1971年9月5日生まれ。W’s音楽事業部企画制作プロデューサー。 ブラジリアンミュージックを核としたバンド『Noa Noa』の作曲家、ギタリスト。 休日は家族で近所へお出かけして過ごすことも多い2人娘のパパ。

NOA NOAのTwitter:https://twitter.com/NOANOA_Official

NOA NOAのInstagram:https://www.instagram.com/noanoa.official/

WGTのウェブサイト:http://weekendgaragetokyo.jp/

WGTのFacebook:https://www.facebook.com/WeekendGarageTokyo