2021.03.03
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【音楽ライブ配信MUSER】Daniel Ek氏:第4四半期の売上発表会見から学ぶSpotifyの3つのこと

MUSERが注目する世界の音楽ニュース

ライブを見ながら、アーティストを応援するための配信プラットフォーム「MUSER」が注目する世界の音楽ニュース。今回は、世界の音楽関連アプリを牽引するSpotifyの現状と今後についてを、CEOのDaniel Ek氏の会見でのコメントから紐解いていく。参照元は音楽ニュースサイトMusic Business Worldwide(以下、MBW)より。

Spotifyが最近実施している全プラン値上げの背景には?


Spotifyは2月3日に2020年第4四半期の財務データなど情報を公開した。その中で、特に目立ったのがSpotifyに登録する有料ユーザーの数が過去最高を更新し、1.5億人を突破したことだった。その有料会員からは、€18.87億(約2400億円)が売り上げ、第3四半期の€17.9億(約2150億円)と比べて5%上昇した。

しかしMBWがレポートした通り、昨年Spotifyは€2.9億(約367億円)の営業損失を計上している。これは例年の4倍に相当する。さらに、昨年の税引き前損失額は€7.09億(約899億円)であり、これは昨年の5倍に相当する。

この状況を受けて、アナリスト達はSpotifyの楽観的な2021フォーキャストに圧倒されている。以下は、Spotifyの会見でEk氏のコメントから分かった3つのことである。

1. Ek氏は、Spotifyが来年も有料会員の数を伸ばすことだけでなく長期的には有料ユーザー数が数億人規模になるポテンシャルを持っていると信じている。

Ek氏は、まずアナリスト達の質問を受ける前に以下のようなコメントを残した。

「2021年は例年に比べると不確実性が高いだろう。しかし、我々がこれまでに達成してきたことを超える能力が今のSpotifyにあると思っている。」

Spotifyのフォーキャストでは、来年の合計有料会員数1.7億人〜1.84億人、売上高€90億〜94億(約1.1兆円〜1.2兆円)を見込んでいる。この数字は会見のアナリストと投資家を驚かせた。

有料会員数の成長性について質問されたEk氏は
「有料会員数が数億人規模になり得るポテンシャルがSpotifyにはある。これは、私が常々信じていたことだが、今は特に強く信じているよ。会見の冒頭でも触れたように我々はグローバル規模のパンデミック渦にいる。そして、このパンデミックは2020年にユーザーの行動をガラッと変化させた。2021年はより不確実性が高い一年になるだろう。だから、我々がフォーキャストで示しているこの数字は、100%確実な要素をもとに出した最低限の数字である。」

2. Spotifyはアプリのソーシャル機能について実験を行っている。

次にアナリストからSpotifyのソーシャル機能の実装についてが質問された。このソーシャル機能とは、ファンとファンがアプリ上でコミュニケーションが取れる機能で、中国の大手ストリーミングサービスTencent Musicでは、ファンが曲ごとにコメントできる機能が実装されている。さらに、質問したアナリストは最近注目を集めているClubhouseについてもソーシャル機能に関連するとして示唆した。

確かに、現在多く存在するソーシャルアプリはビジュアルコンテンツがメインになっているが、Clubhouseは声とオーディオがコンテンツなっている。世界NO.1のオーディオアプリを目指すSpotifyとしたら音でソーシャルコンテンツを提供しているClubhouseから学ぶことはあるのではないだろうか。

Ek氏はこの質問に対して「Spotifyはもちろんソーシャル機能の実装を視野にいれ、オーディオコンテンツに関連するマーケット状況(Clubhouseの台頭など)を常に把握している。私は何回も言っているが、Spotifyは機能面ではまだ初期段階にある。我々は常にクリエイターとファンがオーディオやアプリを通してコミュニケーションが取れるイノベーティブな機能を模索しているよ。実際、もうすでにそのような機能の実験は行っているんだ。ここで発表することはないけど、数ヶ月後は期待していいと思うよ。」

3. 値上げは、会員数の頭打ちを示しているわけではない。Spotifyがさらに成長するための三つの矢の一つ。

Ek氏は会見の最後にSpotifyの成長戦略についての質問を受けた。売上を上昇させるためにはユーザー数と値段のバランスが必要だが、Spotifyの最近の値上げは有料会員数の頭打ちを意味しているのかという質問だ。

Ek氏はこれに対して「Spotifyの成長戦略には三本の矢がある。一本目はプロダクトバリューの向上、二本目は新規マーケットの開拓、三本目は会員価格の値上げである。今までは、この三本のうち一本目と二本目に注力をしていたため、三本目を実行できなかったんだ。」

2018年の7月SpotifyはノルウェーでStandard Plan, Family Plan, Student Planの10%値上げを実施した。その後2020年の10月にオーストラリア、ベルギー、スイス、ボリビア、ペルー、エクアドル、コロンビアの七つのマーケットで同様の値上げを行った。

値上げの結果は良好だと言う。値上げが原因で会員数が減少していないからだ。

Ek氏は「値上げは私の母国スウェーデンなどで有効だと思う。Spotifyの会員数と会員になるポテンシャル人口が等しくなりつつあるからだ。このような場合、値上げはSpotifyをスウェーデン内でさらに成長させてくれるはずだ。さらに、Spotifyだけでなくスウェーデンで活躍するクリエイターにも恩恵が回る。我々は、Spotifyの成長を最大化させようと努力をしており、それにはこの三本の矢が不可欠なのだ。だから、三本目の矢を成長の頭打ちと考えないで欲しい。三本目の矢は我々の成長をさらに加速させるものだ。」とコメントした。

さらにEk氏は「我々は値上げで様々な実験を行なってきた。2年前から徐々に始めたものであり、焦って始めたものではない。ノルウェーから始まり、様々なマーケットで値上げを行っている。値上げを始めた当初は成長戦略の一部として見れなかったかも知れないけど、徐々にマーケットを拡大していく中で理解できると思うよ。値上げをしてもサービスに対するファンからのポジティブな声が増えているからね。」と会見を締め括った。

参照リンク:https://www.musicbusinessworldwide.com/daniel-ek-3-things-we-learned-from-spotifys-boss-on-the-companys-q4-earnings-call/