2021.03.24
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【音楽ライブ配信MUSER】大手レーベルのライブ配信プラットフォームへの投資が相次ぐ

MUSERが注目する世界の音楽ニュース

ライブを見ながら、アーティストを応援するための配信プラットフォーム「MUSER」が注目する世界の音楽ニュース。
今回は相次ぐ大手レーベルによるライブ配信プラットフォームへの投資動向をピックアップします。同じタイミングにて発表された二つのニュースを一度にお届けします。

*本記事は二つの記事をまとめたものになります。


ユニバーサル、韓国大手エンターテインメント会社Big HitsとYG Entertainmentと共に配信プラットフォームに投資

先月、Universal Music Group(UMG)が韓国の二大エンターテインメント企業Big Hits EntertainmentとYG Entertainmentと共に、グローバル規模でのサービス展開を目指すライブストリーミングサービスの運用をするKBYK Liveに投資を行った。KBYK Liveは、昨年Big HitsとKisweによって設立されたジョイントベンチャーである。

KBYK Liveは昨年の9月にライブストリーミングプラットフォームVenewLiveをリリースしている。今回の投資でUMGとYGに所属するアーティストを始め、プラットフォームで公演を行うアーティストの幅を広げたいという。

KBYK Liveのプレスリリースによれば、VenewLiveはUMG、Big hits、YGに所属する世界的に有名なアーティストのパフォーマンスをKisweのテクノロジーを活用する事でハイクオリティで提供したいという。例えば、Kisweが現在開発中の技術を使用して、アーティストのキャラクターや特徴、ファン層を考慮し、パーソナライズされたライブ配信を行なっていく。

Big Hitsによれば、この技術は昨年行われたBTSのオンラインコンサート“BANG BANG CON The Live”で使用したという。このライブでは、世界中から75万人が参加し、アーカイブ配信を含めると計100万人弱の人が視聴した。

以下関係者のコメント

KBYK Live:CEO John Lee氏のコメント

「VenewLiveはすでに、複数の大型ライブでKisweの最新テクノロジーを活用し、6画面同時配信や4K配信でのライブを成功させてきた。このテクノロジーはライブ中のファンとアーティストの距離をより縮めてくれるものである。さらに、アーティストにとっては画面を通り越してエネルギーをファンに送れる媒体となっている。」

YG Entertainment:COO Sung Jun Choi氏のコメント

「我々は、この投資にとても前向きだ。なぜなら、こういったプラットフォームを活用する事で、所属アーティストのグローバル進出に貢献できると考えるからだ。我々はファンとの交流体験を第一としてこれからも活動していく。」

UMG:CFO Boyd Muir氏のコメント

「YG、Big Hits、Kisweにジョインできて大変嬉しく思うよ。UMGに所属するアーティストには、これからどんどんライブストリーミングを活用して、活躍の幅を増やして欲しい。ここ数年で、ライブ配信技術は今までにないほど急成長している。VenewLiveは、業界の中でもトップクラスの配信プラットフォームを提供しており、出演アーティスト一人一人にパーソナライズされたライブ配信公演を作り上げてくれる。これにより、アーティストのファンコミュニティと体験はより良いものになっていくであろう。」

Kiswe:CEO Mike Schabel氏のコメント

「我々はライブ配信技術を2013年から開発してきた。そして、その技術を音楽アーティストのために活用できる事を嬉しく思う。ライブ配信はステージや国境を越えてファンにアーティストのパフォーマンスを提供できる。我々は幸運なことにこれまで、世界の名だたるアーティストに技術を提供してきた。その経験を生かして、どんどんグローバル規模でライブ配信を行なって、ファンに素晴らしいパフォーマンスを提供したいね。」

Big Hits Global:CEO Lenzo Yoon氏のコメント

「Big Hitsの目標は、ファン体験を最大化することで、これは常にパフォーマンスで達成できることではない。テクノロジーを駆使することでファン体験を向上させられる部分もある。今回の投資はそのような目的で行った。我々は目標に向かってエンターテインメントとテクノロジーの組み合わせで試行錯誤していくよ。」


Sony Music ロサンゼルスのライブ配信プラットフォームMaestroの15億円規模ラウンドに参加


さきほどのニュースの後、ライブ配信プラットフォームと大手レーベルに関するニュースが再び発表された。今月ロサンゼルスを拠点としてライブ配信プラットフォームを運営するMaestroが、$1500万(約15億円)規模のシリーズBラウンドを調達というニュースだ。

投資した企業の中には、Sony Music Entertainmentや中国大手テック企業のNetEase、そしてVCでは、Acronym Venture Capital、Stadia Venturesなどが含まれる。この調達により、Maestroは設立から合計$2200万(約22億円)を調達したこととなる。

Maestroには、ライブ配信プラットフォームに加えてクライアントにチケット販売や物販を行う機能やライブ中にコメントや投げ銭などで出演者とファンが交流する機能がある。さらに、Maestroはリアルライブ、バーチャルライブ、ARライブなど様々なフォーマットのライブに対応することができるのも強みだ。

このような機能・強みからMaestroは、Coachella、Electronic Arts、Epic Games (Fortnite)、The Recording Academy (グラミー)、Universal Music Groupにサービスを提供した実績がある。さらに昨年行われた、ビリー・アイリッシュの「Where Do We Go? The Livestream」でもサービスを提供したことで有名だ。

Maestroは2020年に売上を3倍までに伸ばし、物販機能や投げ銭機能を通じて数億円規模のキャッシュをアーティストに還元してきたという。

以下は関係者のコメントである。

Sony Music:Global Digital Business President Dennis Kooker氏のコメント

「我々は、近年音楽に関するテクノロジーへの投資を活発に行っている。その流れの中で、Maestroに投資できたのは、とても喜ばしいことだ。Maestroのプラットフォームはとてもフレキシブルで、ファンとアーティストのインタラクションも凄まじい。このような、プラットフォームはアーティストにワールドクラスのコンサートを可能にしてくれる。」

Acronym Venture Capital:General Partner Joshua Siegel氏のコメント

「Maestroは、今での一方的なライブ体験を大きく変えてくれた。今や、オーディエンスとアーティストが一体となってライブそのものを作り上げている。我々Acronym Venture Capitalはこれからどんどん成長するであろうMaestroのポテンシャルに投資することができて大変嬉しく思う。」

Maestro:CEO Ari Evans氏のコメント

「我々は、歴史的な経済シフトの真っ只中にいる。できるだけコストを下げて、良いものを生産し、それをできる限り大きな範囲で提供する時代から、コアオーディエンスを見つけて自分の好きなことを通してマネタイズする時代に変化している。今では、世界中で多くのクリエイターが国境を越えてファンにコンテンツを提供している。そして、我々のプラットフォームを使うことでアーティストたちは、コンテンツを提供しながらマネタイズすることができ、彼らの活動の更なる成長につながるだろう。アーティストのパートナーとして活躍できることは大変光栄なことだ。」


このように、音楽業界の中心である大手レーベルが配信プラットフォームサービスに着目している。コロナ渦のなかで、音楽ライブの代替品として注目されたようになった配信プラットフォームだが、大手レーベルが着目することで代替品ではなく、新しい音楽の楽しみ方として見られるようになるかもしれない。コロナ後では音楽業界でどのような立ち位置を確立するか目が離せない。



参照リンク
https://www.musicbusinessworldwide.com/universal-teams-with-big-hit-and-yg-entertainment-to-invest-in-global-live-streaming-platform/

https://www.musicbusinessworldwide.com/netease-and-sony-music-join-15m-investment-round-in-live-streaming-platform-maestro/