2021.05.05

【音楽ライブ配信 MUSER】クリエイターに作品の真の価値を気づかせる・Sound Royalties社

MUSERが注目する世界の音楽ニュース

ライブを見ながら、アーティストを応援するための配信プラットフォーム「MUSER」が注目する世界の音楽ニュース。

今回はアメリカの金融会社Sound Royalties社に注目したニュース記事をご紹介!彼らは、クリエイターが権利を手放さずにキャリアを積むことができるよう、ロイヤリティの前払いを行っているという。

独立系アーティストにどのような影響を及ぼすのか?



インディペンデント・アーティスト(独立系アーティスト)になるのに今ほど適した時代はない。

信頼できる分析プラットフォームMIDIAによると、DIYアーティスト界隈の年間収益は2020年に34.1%増加し、世界で12億ドルを生み出している。

この分野で活動するアーティストにとって、独立する事とはすなわち経済的な独立も意味する。特にツアーができないこのご時世では、権利を売ることが、アーティストとしての生業を成り立たせる唯一の手段といっても過言ではない。

そこで注目したいのが、アメリカの金融会社Sound Royaltiesである。Sound Royaltiesは、クリエイターが権利を手放さずにキャリアを積むことができるよう、ロイヤリティの前払いを行っている。

また、Sound Royaltiesは、昨今ますます混雑してきている一方で、収益性が非常に高いとされる、音楽カタログ・ビジネスの分野にも進出している。

同社は、自身のカタログの売却を検討している者に専門知識を提供している。また、可能な限りクリエイターは自身のカタログは保持するべきというスタンスを踏まえつつ、売却してから現金が届くまでの間の資金をも提供している。

創業者兼CEOのアレックス・ハイチ氏によれば、Sound Royaltiesは現在、音楽業界で「最大の民間金融サービス会社」であり、50人のフルタイム従業員を抱え、今後も世界的な拡大が見込まれているという。

ハイチ氏は、同社がこれまでに支払った前金の額については公言できないが、何十万もの楽曲と何千もの個別ストリームの支えとなったと述べている。

Sound Royaltiesが協力した代表的アーティストには、Lil Wayne(2018年)が挙げられる。Lil Wayneが支援を受けていたCash Money社、Universal Music社およびWyclef Jean氏との法的紛争に巻き込まれている間、2019年に開催された彼のCarnival World Music Groupの資金支援を行った。

また、同社は「かなりの数」の音楽カタログ販売を支援したと発表し、その結果として、2月にSound Royaltiesは年間5万ドル以上のロイヤリティを得ているミュージシャンであれば誰でも利用できる新しいカタログ販売支援サービスが開始する運びとなった。

このサービスを開始したきっかけは、Sound Royaltiesが前払いしたクリエイターたちが、売上目標に到達できない事例の余りの多さを目の当たりにしたことだとハイチ氏はMusic Business Worldwide(以下、MBW)に語る。

「多くの場合、クリエイターは、権利の価値や取引に含まれる内容を必ずしも理解しているわけではないのだ。」とハイチ氏は語る。

ハイチ氏の会社は、年間3,500ドル以上の音楽ロイヤリティを得ているアーティストに前金を提供している。その額は、3,000ドルから1,000万ドル以上に及ぶ。提供する金額、どのくらいの費用をかけるか、個々の状況に応じてリスクに応じた価格設定をしている。

「価格の決定は、次のような10〜12の変数を組み合わせて検討している。2000年以前の標準的な楽曲で、今後も支払いが続くものか?新曲なのか?ジャンルは何か?シングル曲なのか?カタログなのか?海外での収入が多いのか、国内での収入が多いのか?これらすべてが私たちの秘伝のレシピであり、誰がどのような収入を得るのかを正確に予測し、私たちが提供する幅広い支援の中から適切なものを活用できるようにしている」と、ハイチ氏は説明する。

ハイチ氏がSound Royaltiesを設立したのは、ハイテクソフトウェア業界や特殊金融業界で数年働いた後だ。2013年、彼は自分が情熱を持てる業界に参加したいと考え、音楽業界と既存の金融サービスを調査し、どこにギャップがあるのかを探り始めた。

ハイチ氏は「私は資金調達面を理解し、そのアプローチで市場に参入しました。すべての銀行を訪問してわかったことは、クリエイターの85%は断られるという事です」と述べている。

資金調達のギャップを埋める手助けをしたいと考えたハイチ氏は、すでに存在するいくつかの金融サービス会社と提携、または買収ができないかを検討したが、多くの金融サービス会社が運営している、著作権を購入する事業に特化したモデルが気に入らなかった。

彼は、長期的な関係を築くためのソリューションを提供したいと考えていた。

「継続的な収入を得られるようにすることは、相手にとってもメリットがあり、我々にとっても関係を長く保つことができるのだ」とハイチ氏は語る。



ここからは、著作権の売却を検討しているクリエイター達へのアドバイス、どんどん拡大する音楽カタログ買収市場の影響、音楽ビジネスの課題点、Sound Royalties社の今後の抱負などについてMBWがハイチ氏に話を伺った。


ご存知のように、近年HIPGNOSIS SONGSに後押しされる形で、音楽カタログ買収事業に大きな関心が寄せられています。それがSound Royalties社やクリエイターにどのような影響を与えていると思いますか?

それは、クリエイターが自分たちのロイヤリティ・ストリームの本当の価値を理解することを促すことに繋がっていると思います。自分の作品の所有権を持つことの重要さに気づき始めています。これはクリエイターにも、Sound Royaltiesにも大変プラスの影響と言えます。

ほとんどのクリエイターは、巷でよく聞くビッグネームのように音楽カタログから数億ドルを手にすることは難しいです。彼らの音楽カタログが数億ドルレベルのものに達し、売却する意味合いが出てくるまでは、私たちのプログラムが最適なソリューションと言えます。

何が資産を売る動機になるのか?一般的には金銭的な理由だ。
例えばキャリアや生活のための資金をどうするか、プロジェクトのための資金をどうするか、あるいは、投資したいと思うかもしれません。そこで私たちは、音楽制作者を保護し、向上させる方法で、一般的な問題に対する代替ソリューションを提供しています。それでもクリエイターが売ると決めるのであれば、単純に買い手がお金を払えば売ることができますが、多くの人は自分のかわいい赤子を売るのですから、それは避けたいと思うのが人情でしょう。


権利の売却を考えているクリエイターはどのようなことに気をつければよいでしょうか?

自分の資産の価値を理解することでしょう。過去にカタログを販売しているあるクリエイターが訪問してきたのですが、彼いわく年30万ドル強の売上のある自分のカタログが500万ドルでの売却オファーが来ている真っただ中だった。年間売上の約17倍の額という事もあり彼はかなり満足していた。私もその場ではかなり割のいい取引だと思いました。

しかし、実際のカタログを見てみると、すぐに年間約18万ドルに相当するプロデューサー・ロイヤリティが組み込まれていることがわかりました。クリエイターはそれが組み込まれていることに気づいていない様子でした。おそらくクリエイターが属する会社に還元されていたため気付かなかったのだと推測できます。

そこで私は彼に「いいか、あなたは年間約50万ドル価値のものを500万ドルで売ろうとしている。ほんの10倍だ。このカタログはエバーグリーンものなのだから、17倍分しっかり要求することができるぞ」と言いました。

最終的に彼は理解を示し、オファー先には年間30万ドルの約17倍の500万ドルしか要求しなかった代わりに、年間18万ドルの価値があるプロデューサー・ロイヤリティは手放さなかった。結果的には自分でも気づかなかった収入源を確保したのだ。

また、カタログを販売する際に、権利の返還や回収の機会を考慮しないクリエイターもいる。LOI( Letter of Intent :基本合意書)後にカタログが次々と売れずに売上が低迷することのネガティブインパクトを理解していない場合も多いのだ。

さらには、何年も前から契約書に著作隣接権が盛り込まれているにもかかわらず、そこから発生する収入を回収しない人も多々見受けます。ここ数年で、隣接権はどんどん支払われるようになりましたが、契約書のたった一行に過ぎないために考えなしに収集もしていないのです。つまり、彼らは知らないうちに権利を放棄しているの場合があります。

資産の価値は何なのか、資産の潜在的な価値は何なのか、どのように売却を構成すれば最も利益を得られるのかを真に理解することが重要です。また、資産のすべてを売却する必要はなく、パーセンテージベースで売却することもできます。そういう選択肢もあるという事を知るのことが大切だと言えます。


今後、音楽カタログやロイヤリティ事業はどのようになっていくと思いますか?

先ほど申し上げたように、クリエイターは必ずしも100%ではなく、80%や50%の割合で権利を保持することの重要性を認識し始めているケースが増えました。

また、権利再取得のための復帰権が保護されるようにもなってきています。30歳や40歳のアーティストが、65歳や75歳になったときには、考えてもみなかったような大きな違いを生み出すことができるという事をクリエイター自身が認識してきています。

ストリーミングからのロイヤリティがクリエイターに支払われることは今後も増えていくだろうし、ストリーミングへの移行や理解もさらに進んでいくことが予測されます。

クリエイターが自分のキャリアを伸ばすために収入を得たいと考えるケースが増えてきています。独立している人もそうでない人もいる、それでもプロジェクトの一部を自己資金で賄い、所有権を保ち、より多くの金銭的利益を得たいと考える者が増えていくと思います。


金融業界出身のハイチ氏が、音楽業界の中で改善されるべきだと感じたことはありますか?

もちろんです。私がこの業界に入ったとき、「ロイヤリティ」を理解するために、あらゆる収入源をマッピングした小さなチャートを作りました。はじめは5つか6つ程だったことを覚えています。少なからず私が当時理解していたことであり、多くの人からもそう教わったことでもあります。今ではクリエイターが収入を得られる可能性のある収入源は50種類以上にもなります。

私はもっとシンプルなモデルを望みます。私たちは、数少ない最高のチームを持つ大手企業とともに仕事をしてきましたが、あまりの複雑さ故に、10のうち8〜9の割合で収集すべきものをしっかりと収集できていないことがよくありました。しかし、かつてはストリーミングが軽んじられ、いまでは注目の的であるように、変化は最重要事項です。

私は、この業界がもっとシンプルなモデルに移行し、クリエイターが「これが私の報酬で、これが私の収入源だ」としっかり理解し、制作に集中、熱中できるようになることを望んでいます。現状は明らかにそうではないでしょう。


そのシンプルなモデルがどのようなものか、なにかイメージはありますか?

インディペンデント・レーベルが出版も行うようになったり、出版社が自らレコーディングしリリースするようになったりと、少しずつですが流れが時代に溶け込んできています。大きな問題のひとつは、メカニカル・ロイヤルティが演奏収入やインタラクティブ・ストリームに支払われていないことでしたが、Mechanical Licensing Collectiveの登場により、SoundExchangeの最新のストリームがその問題の大きな部分を担っていたこともあぶりだせました。

このカタログ業界は、今日の音楽経済において非常に深い関連性があり、重要な主要事業体に集約されつつあります。クリエイターはワンストップショップで仕事をする事例も増えています。クリエイターがワンストップで仕事をすることで全ての収入源からしっかり回収していることがディストリビューターたちを通してよく分かります。大変だが、なにかが確実に変わってきています。


Sound Royalties社の今後の計画や野望は何ですか?

まだまだ手探りの状態です。私たちのビジネスの多くは、私たちの仕事に満足したクリエイターやマネージャーからの紹介、あるいは弁護士や業界団体が私たちの仕事をクリエイターに紹介し始めたことなどから成り立っています。私たちがやっていることを知らない人がまだまだ多いのを逆手に、それをベースにして成長していきたいと思っています。

ビジネス開発のアーティスト・リレーション・チームとともに、音楽都市を実際に我々の仕事場とすることで、現場での存在感を拡大しています。また、グローバルな展開も続けており、海外のアーティストとも仕事をしています。

アメリカでは3億3,000万人、ラテンアメリカでは7億2,900万人の人々が音楽にお金を払い、これからも払い続けるでしょう。インドと中国には13億人の人々がいる。つまり、これまで音楽にお金を払っていなかった26億人、27億人の人々が、10元や10ルピーでも払ったり、広告を見てお金を払ったりするようになっているのです。音楽はグローバルな市場になりつつあり、収益もグローバルに流れています。私たちはそのような市場にサービスを提供していくつもりです。


参照:https://www.musicbusinessworldwide.com/creators-are-starting-to-see-the-true-value-in-retaining-ownership-of-their-work/