2021.06.30
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【音楽ライブ配信MUSER】ソニーミュージック が歴史的な発表:長年アーティストの負債返済を取り消し

MUSERが注目する世界の音楽ニュース

ライブを見ながら、アーティストを応援するための配信プラットフォーム「MUSER」が注目する世界の音楽ニュース。今回はMusic Business Worldwide(以下、MBW)より、ソニーミュージックの驚くべき発表をご紹介。


ソニーミュージックが今日(6月11日)、今後何年も音楽業界で話されていくであろう発表をした。

ここ最近音楽業界で発言力ある人物の多くが、長年アーティストのレコードレーベルへの負債返済を取り消すよう声を上げてきた。これは、アーティスト自身にロイヤルティ収入が入ってくる現代的な仕組みであり、数十年前までのようにレコードレーベルに収入を吸い取られてばかりの仕組みとは異なる。

このことは、多くの場合黒人の長年アーティストに該当する。昨年夏、「ブラックアウト・チューズデー」が業界全体で議論されていた中、アメリカのベテランアーティストマネージャー兼弁護士のRon Sweeney氏は、主要レコード会社に向け様々な革新的方針を実行するよう求めた。Sweeney氏は、「2000年以前に契約を結び現在契約中でない黒人アーティストへの敬意を払い、彼らの負債返済を完全に取り消し、ロイヤルティが彼ら自身に流れるよう求める」と表記した。

音楽業界の多くの人が、このような斬新な方針に主流レコード会社が便乗するとは思ってもいなかっただろう。しかしそれは間違っていた。

ソニーミュージック エンターテイメント(SME)が幾千ものアーティストに宛てた手紙(MBWが保持する)には、SMEの「Artists Forward」と呼ばれる新しいキャンペーンが発表されており、これは「クリエイターに対する全ての局面においての透明性を最優先すること」に焦点が置かれている。

SMEの「Artists Forward」内でも画期的なのが「Legacy Unrecouped Balance Programme」と呼ばれるポリシーである。手紙内では、「自社がこれからも継続してクリエイターに経済的チャンスを与えるため、2000年以前にSMEと契約を結び、2000年以降に前払金を受け取っていない世界中の対象アーティストおよび参加者に対して、2021年1月1日以降に発生した売り上げにおける負債返済を取りやめる。」とした。

「このプログラムを通し、我々は現在の契約の再交渉をするのではなく、既存の負債返済を取り止める事によって、自らの音楽でより稼げるであろうアーティストの能力を伸ばすことを選んだ。」

「自社がこれからも継続してクリエイターに経済的チャンスを与えるため、2000年以前にSMEと契約を結び、2000年以降に前払金を受け取っていない世界中の対象アーティストおよび参加者に対して、2021年1月1日以降に発生した売り上げにおける負債返済を取りやめる。」Sony Music Letter to Artists, June 11

この一連の出来事が何を意味するのか:それは、ソニーが効果的にアーティストに対する負債返済を無視しているという事である。

厳密にはなぜソニーの元帳に負債の差額が残るか、それはアーティストが負債回収の復帰権を所持している場合があるからである。このような場合、SMEは企業がアーティストにロイヤルティの支払いをしていない場合を監視する。 

しかし問題はここにある:仮に2000年以前にソニーから報酬を受けていたアーティストが今になって埋め合わせされたとすると、彼らはストリーミング等のロイヤルティを定期的に受け取ることとなり、今年1月1日まで遡った金額が支払われる。

さらに、ソニーと古くから契約を交わしているアーティストへのグッドニュースはここで終わらない。

ソニーのLegacy Unrecouped Balance Programには、この新しいポリシーは条件を満たす「アーティストおよび参加者」双方が対象となるとの記載がある。MBWはこの「参加者」とは、プロデューサー、JVパートナー、またSMEと過去に直接契約したことのある全てのレーベルが含まれることを確認している。

ソニーは、Legacy Unrecouped Balance Programの対象となるアーティストおよび参加者は今後数週間の間に個別に資格の通知をされると言う。

ソニーミュージックの関係者は、Legacy Unrecouped Balance Programのような大きな決断をする際、社長Rob Stringer氏は自社のアーティストに対し「正しいことをする(Do the right thing)」というモットーに基づいたとMBWに伝えた。

ソニーミュージックがSpotifyのセールス約848億円($768,000,000)収益分配においてアーティストの負債返済を取り消すと発表してから三年が経った。

ソニーのこの驚くべき動きは、ワーナーミュージックグループに反するものであった。ワーナーミュージックは、Spotifyにおける約575億円($504,000,000)の収益のうちアーティストに分配する25%を、各アーティストの負債返済へ充てたのだ。

それに対しソニーは約848億円($768,000,000)のうちアーティストにシェアされる全てのペニー約276億円以上($250,000,000以上)は、会社ではなくアーティストに支払われることを保証した。

一方で、ソニーミュージックは対象の長年アーティストおよび新規アーティストに対し、収入の前金をSony Music Artist Portalから使用可能な「Real Time Advances」という新しい機能を通して受け取ることができると発表した。

対象のアーティストおよび「参加者」は、去年ローンチされたSMEのCash Out 機能からSony Music Artist Portalが使用可能になれば、すでに月々の返済の全てまたは一部をそこで引き落としすることができる。

ソニーは「Artist Forward」の手紙にて、「我々はアーティストに対し最高度のサービスを与えるというミッションのもと動いている」と述べている。「本日発表するプログラムは、そのミッションに対する試みの一部であり、将来の契約形式、柔軟性のある取引オプション、クリエイターへの先進的なデータと分析など様々な取り組みに対する一歩であり投資でもある。」と記載している。


少なくとも音楽業界の主要個人レーベルグループの一社が長年アーティストに対する負債返済を取り消す動きを導いた。

XL、4AD、Matadorなどを持つBeggars Groupは、アーティストとの「Active relationship」が終了する15年前から負債のクレジットを取り消す取り組みを行なっている。例)契約上最後のレコードがリリースされるまで、など

2016年、Beggarsの設立者でありチェアマンのMartin Mill氏は、各アーティストとの「Active relationship」が終了する20年後、主要レーベルに対しこのポリシーを見習うよう挑んでいた。

ソニーミュージック が今日、その挑戦状を受けた。

参照:https://www.musicbusinessworldwide.com/in-historic-move-sony-music-announces-its-disregarding-unrecouped-balances-for-heritage-catalog-artists/