MUSERが注目する世界の音楽ニュース
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今回は、アメリカ音楽業界における過去カタログの圧倒的強さを、様々な数字を比較しながら紹介したMusic Business Worldwide(以下、MBW)の記事をピックアップします。
2021年上半期、アメリカではオーディオ・ビデオプラットホーム上で5,553億回楽曲が再生された – 対前年比で543億回の増加だ。
しかしアメリカの音楽業界においてより重要なのは、人々がどれほど楽曲を聴いたのではなく、何を聴いていたか、だ。
MRC Dataの最新の中間レポートによると、2021年6月末までの6ヶ月において、アメリカの総アルバム消費数のうち66.4%を過去カタログが占めた(ここでいう「過去カタログ」とは消費者が楽曲を購入/再生する18ヶ月以上前にリリースされた楽曲を指す)。
この66.4%という数字は、2020年上半期の63.9%に比べ増加を見せており、前MRC Data/Nielsen Musicレポートによる2018年上半期の60.8%よりもさらに高い。
補足:MRCの「総アルバム消費数」の計算方法とは、実物の「アルバムセールス」と1曲のダウンロード数やストリーム回数などの「デジタルセールス」をまとめたものであり、「デジタルセールス」は実物のアルバムセールスと同等の単位に変換されている。この計算をする為MRCは、アルバム内の曲がサブスク上でプレミアム会員により1,250回、または広告付きで3,750回再生されるごとにLP1枚の売り上げと換算する。シングルアルバムにおいても同様の計算方法で、ダウンロード10回ごとの換算となる。この方式は「収入を反映する」ようデザインされている – 例えば、1,250回のプレミアム会員による再生はアルバム1枚の収入とほぼ同一の利益を生み出す。また、「総アルバム消費数」はデジタル無線及び地上波のラジオでの再生数は含めていない。
一方で、最新楽曲(消費者が楽曲を購入/再生する前18ヶ月以内にリリースされた楽曲)の総アルバム消費数は減少傾向にある。
2021年上半期、MRC Dataのレポートによると最新楽曲は全ての楽曲の消費数において33.6%のみにしか及ばず、2020年上半期の36.1%から減少している。
実際、今年上半期、アメリカの「アルバム同等売り上げ枚数」は4億3,470万枚であり、うち2億8,860万枚は過去カタログである。
これは、最新楽曲のアルバム同等売り上げ枚数(1億4,610万枚)に比べ約2倍である。

水色:最新リリース、えんじ色:過去カタログ、黄色:総合
「過去」楽曲と「最新」楽曲の売り上げ成長パターンを比べてみると、「過去」楽曲が大いに優勢であることが分かる。
MBWによるMRCのレポート分析によると、2021年上半期対2020年上半期における過去カタログのアルバム同等消費は、4,410万枚増加している。
一方で「最新」楽曲はというと、前年比成長が770万枚のみである。
これを踏まえこのように考えてみて欲しい:もしこのパターン(「過去カタログ」が4,410万枚/年のペースで増加、「最新」楽曲が770万枚/年のペースで増加)が今後9年間続くとしたらどうだろう?
2030年上半期には、「過去カタログ」が6億8,550万枚の売り上げを出すのに対し「最新」楽曲は2億1,540万枚のみとなる。
言い換えると、この推測上のシナリオにおいて、「過去カタログ」は76%のマーケットシェアを持つことになる。「最新」楽曲は市場の4分の1となる約24%のシェア率となる。
結論を急ぐ前に、2021年度のその他アーティストの行動を見てみよう:アデルやコールドプレイ、エド・シーラン、ドレイク、リアーナなど世界の超大物スターが今年中に新しいアルバムリリースをするとも言われており、「最新」楽曲と「過去」カタログの現在の商業的軌道を改める可能性もある。
MRC Dataレポートによると、モーガン・ウォレンのデンジャラス:ザ・ダブル・アルバムがアメリカで今年上半期最もヒットしたアルバムとなった。このアルバムは210万8,000枚消費ユニットを獲得しており、23億1,500万オーディオ再生を記録した。
同期間で最もヒットしたシングルトラックは、オリヴィアロドリゴのドライバーズ・ライセンスで、1月にリリースされて以来4億6,020万回のオーディオ再生を記録している。